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太陽が真上からけだるい
体を照らす
いつものように
病院へ向かう道
美冬には黙っていよう
話せば公演に来たがるに違いない
それが出来ないから
知らない方がいい
「美冬、どう?」
「蓮…今日は遅かったね」
「ごめん、バイトが朝までだったから」
「そう…大丈夫?」
「うん、帰ったら寝るから」
そっと手を握る
点滴だらけの細い腕
「顔色はいいね」
「うん」
「ちゃんと食べてる?」
「……………」
「どうせ食べても…って考えてるの?」
「だってそうだし」
「ダメだよ、もしかしたら宝くじが当たるかも
知れないだろ?」
「そんな夢みたいな話」
「美冬が諦めてしまったら、俺も頑張れないよ?」
「えっ?」
「大丈夫だから…必ず美冬を助けるから」
「蓮…」
「だから、ちゃんと食べて、体力をつけないと」
「信じていいの?」
「俺が今まで嘘を言った事がある?」
「ない」
「だろ?」
「うん」
短い時間はあっという間に過ぎてしまう
「じゃ、また明日」
「うん」
優しく頭を撫で、病室を出る
美冬は籠の鳥
俺との短い時間が終われば、またじっと明日を待つだけ
「必ず籠から出してあげるからね」
閉めたドアに向かって
呟いた
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