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正直、料理の味なんて
わからなかった
真央は慣れた手つきで
フォークとナイフを操る
俺の目の前に居るのは
正真正銘のお坊ちゃまか
「蓮、美味しくなかった?」
「いや、大変美味しゅうございます」
「ぶはっ!何だよそれ」
「誰だかの真似」
「蓮は真面目そうな顔をしてそんな冗談言うから笑える」
「そう?」
ワインを飲みながら笑う
「あっ、ちょっとごめん」
真央はかばんの中から
薬を取り出し、飲んでいた
「たくさん飲むんだね…どこか悪いの?」
「いや、単なるサプリだよ」
「そっか」
「うん」
それ以上は聞かなかった
真央の目がこれ以上は
聞いてほしくないと
言っていたから
「ふぅ~、ちょっと飲み過ぎたみたい」
「大丈夫?」
「ん~」
「出ようか」
「うん」
真央は会計もせず、店を出た
「えっ?」
「ああ、大丈夫」
何が大丈夫なんだろう
食い逃げだとしたら
走って逃げる元気はないのに…
「そんな心配そうな顔しなくていいよ…あの店は母親がやってる店なんだ」
「そうなんだ」
「まぁ、趣味の店みたいなもの」
「趣味ね…」
「送るよ」
「うん、ありがとう」
雑誌でしか見たことのない車に乗り、駐車場を出た
「どこに向かえばいい?」
「蓮?」
「寝てるし……クスッ」
真央は笑いながら、車を走らせた
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