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長い時間は居られない
美冬が疲れてしまうから
手を握りながら
短い時間を過ごす
美冬も俺も
両親はいない
だけど美冬は親が残してくれた財産があるので
お金には困らない
しかし、移植となれば
話は別だ
俺はしがない役者の卵で
生活は最低だった
美冬と知り合ったのは
劇団
一目惚れしたのは美冬
俺は一生懸命尽くしてくれる美冬に惹かれていった
そして幸せの絶頂だったある日
美冬は倒れた
そして初めて、美冬の
心臓の事を知った
だけど俺は、今まで通り
美冬を愛して行こうと
誓った
愛していたから
一緒に生きると決めていた
「じゃ、稽古があるから行くね」
「明日も来てくれる?」
「もちろん」
おでこにキスをして
病室を出た
「移植か…」
稽古があるなんて嘘だった
俺の頭の中は混乱していた
今のままの生活を続けていては、移植をさせてあげることは不可能に近い
ただ、死を待つだけしかないのか?
一生、白い籠の中で…
無力な俺
愛する人すら
幸せにしてやれないなんて…
情けなくて笑える
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