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俯きながら歩く
気付けば木蓮の木の近くまで来ていた
「先客か…」
木蓮の下で眠っている
青年
そのまま通りすぎようとした時…
「倒れてるのにしかと?」
声が聞こえた
「えっ?」
ゆっくり振り向き
青年を見た
「冷たいなぁ…」
「寝ているのかと」
「誰がこんなところで寝るかよ」
「話が出来るなら大丈夫だろ?」
俺は今、暇人に構ってやれる程、心にゆとりなんかない
そのまま歩き出す
「うっ…っ」
頭を押さえながら
苦しむ青年
「大丈夫か?」
「ごめん…バックから
薬を…」
言われた通り、バックから薬を取り出し、青年に渡した
「飲ませて…」
かなり痛がっている
口の中に薬を入れ、さっき買った水を飲ませた
どうしよう…
座りながら青年を抱きしめていた
このまま青年を置いて
行ってもいいのだろうか
「ありがとう…もう行ってもいいよ」
青年は体を離しながら言った
「大丈夫?」
「ああ…いつもの事さ」
「いつも?」
「持病みたいなものだよ」
「そう…」
立ち上がり、歩き出そうとした時
俯く青年の瞳から
透明の雫が流れ落ちるのを見た
本当は自分の事だけで
精一杯のはずなのに
何故か青年の隣に座り
黙って空を見つめていた
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