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「あんた、優しいんだね」
「蓮だ…あんたじゃない」
「ごめん、俺は真央」
真央…
今時の青年だな
明るい色の髪が帽子の隙間から見えた
陶磁器のような白い肌
初めて見た白さだ
「蓮、俺は別に泣いてなんかいないから勘違いすんなよ」
「わかったよ…うさぎの瞳の真央」
「おい~!」
「もう大丈夫?」
「ああ、ありがとう」
「よかった」
「この木…何だろ?」
花びらを掴みながら
呟く
「木蓮だよ」
「木蓮?」
「ああ」
「木魚なら知ってるけどな~」
「全然違うね」
「だぁね!」
「真央はまだここに?」
「いや、帰るよ」
「そっか、駅に?」
「まぁね」
「送ろうか?」
「えっ?」
「車がこの先にとめてあるから」
「でも…」
「気にしなくてもいいよ…今日はドライブしたい気分だったから」
「じゃ、送ってもらっちゃおっと」
「うん」
真央はゆっくり立ち上がり、歩き出した
細い体…
破れたジーンズ
俺とは正反対だな
今時のファッションなんだろう
「何?」
「そのジーンズの破れ…」
「ああ、自分でやったんだ」
「うまいね」
「一応、そんな関係の
仕事だからさ」
学生かと思っていたのに、見事に外れた
「蓮はリーマン?」
「違うよ」
「そんな歳じゃないか」
「そんな歳がいくつなのかはわからないけど」
「俺は20才、蓮は?」
「21才だから、俺がお兄さんだね」
そんなたわいのない話をしながら車を目指していた
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