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もう真央にはあまり
時間がないように感じた
最近は外に出るのも
辛そうなので、二人で家に居る事が多くなった
「ごめんね」
真央が突然謝る
「ん?」
「外に行けなくて」
「いいよ…外は寒いし、俺は寒いのは苦手」
「蓮…」
二人でDVDを観たり
たわいのない話をするのが当たり前の毎日
相変わらず副作用は
辛そうだ
体も痩せてしまった
無理して笑う笑顔が
痛々しくて
そんな真央を見ながら
何度隠れて涙を流したんだろう
真央との約束は
二人が自由になった時に
果たしてあげるよ
今の俺には
真央を抱きしめるだけで精一杯なんだ
肩にもたれていても
まるで空気みたいに
軽い
消えてしまいそうで
いつも手をにぎりしめていた
今日の真央は口数が
いつもより少ない
余程、辛いのか…
「蓮…」
「ん?」
「紅茶が切れてるんだ」
「そっか…じゃ、買ってくるよ」
「悪いんだけどこれを買ってきて」
真央に渡されたメモには
弱々しい文字で銘柄が
書いてあった
そのメモを受け取り
コートをはおる
「急いで行ってくる」
「………うん」
玄関を出る時に真央は
笑顔で言った
「蓮…愛してる」
「俺も愛してるよ」
その言葉の意味に気付かなかった俺は
大馬鹿野郎だった…
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