732人が本棚に入れています
本棚に追加
「ママ~!」
「待って…」
ゆっくり歩きながら
ふと、木蓮を見つめる
蓮…
貴方は毎日、嫌な顔ひとつしないでこの道を歩いて会いに来てくれていたんだね
今なら素直にありがとうと言える
私を助けてくれると言う約束を果たしてくれた
手術が成功して日本に
戻って来た時、もう
貴方はいなかった
「どうしたの?」
5才の娘が木蓮の木の上を見上げていた
「綺麗な鳥さん」
「鳥?」
娘の視線を追う
「ほんとだ」
「仲良しさんだね」
「そうだね」
寄り添いながらまるで私達を見ているようだった
「待ってくれよ…」
「パパ遅い!」
「ごめんごめん」
日本に戻ってこの人と
知り合った
そして今は幸せな生活を送っている
私が今、こうして笑っていられるのも蓮のおかげ
(美冬、幸せに…)
「えっ?」
蓮…?
(バサバサバサッ)
「あっ、鳥さんが」
二羽の鳥が大空に飛び立って行った
仲良く飛んでいる鳥が
蓮と真央に見えてしまった
「二人も幸せ?」
(もちろんだよ)
風に揺れる木蓮の花びら
二人の恋の始まりは
この木蓮の木の下から
始まった……
ー完ー
最初のコメントを投稿しよう!