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別に悪いことをしてるわけじゃない。ここには本当に大切なものが入ってる。ずいぶん昔に父さんからもらったブレスレットや、母さんからもらったおみやげのミニカー。家族で撮った写真、クロト達と撮った写真。ブレスレットもミニカーも家族写真も、全部僕が小学校一年の時のもの。だからきっと母さん達は覚えてない。でも、僕にとっては大事な思い出だ。
「鳴らないんだな、このオルゴール」
机にあった年期のはいった木箱をいじくるロイムの声が、すごく穏やかで淋しげだった。
「かなり前のだから」
これも母さんからのおみやげ。引き出しに入らなかったからそこに置いておいた。どんなメロディーを奏でていたかは忘れてしまったけど、聞くたびに心が落ち着いたのは覚えてる。
「ロイムはオルゴールに思い出とかあるの?」
「俺母親いないんだよね。小さい時に死んだんだと。顔なんて全然覚えてない。写真で見たくらいでさ。唯一覚えてんのが子守歌だけ。その子守歌が、俺の部屋にあるオルゴールってわけ」
「そうなんだ…」
そんな設定があったなんて知らなかった。思い出、なんて楽しいもんじゃない。
「でも別に気にしてないぜ?覚えてない分哀しくねーし」
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