5

3/3
4人が本棚に入れています
本棚に追加
/32ページ
別に悪いことをしてるわけじゃない。ここには本当に大切なものが入ってる。ずいぶん昔に父さんからもらったブレスレットや、母さんからもらったおみやげのミニカー。家族で撮った写真、クロト達と撮った写真。ブレスレットもミニカーも家族写真も、全部僕が小学校一年の時のもの。だからきっと母さん達は覚えてない。でも、僕にとっては大事な思い出だ。  「鳴らないんだな、このオルゴール」  机にあった年期のはいった木箱をいじくるロイムの声が、すごく穏やかで淋しげだった。  「かなり前のだから」 これも母さんからのおみやげ。引き出しに入らなかったからそこに置いておいた。どんなメロディーを奏でていたかは忘れてしまったけど、聞くたびに心が落ち着いたのは覚えてる。  「ロイムはオルゴールに思い出とかあるの?」  「俺母親いないんだよね。小さい時に死んだんだと。顔なんて全然覚えてない。写真で見たくらいでさ。唯一覚えてんのが子守歌だけ。その子守歌が、俺の部屋にあるオルゴールってわけ」  「そうなんだ…」 そんな設定があったなんて知らなかった。思い出、なんて楽しいもんじゃない。  「でも別に気にしてないぜ?覚えてない分哀しくねーし」
/32ページ

最初のコメントを投稿しよう!