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 夏休みに入って一週間が過ぎた。生活リズムがかなり乱れていると実感する。起きた時の時計の針が十時半を指していた。  「朝ご飯、食べる気しないな」 一昨日から父さんと母さんは仕事でいない。出張ってやつだ。僕は夏休みだっていうのに休みなく働いてくれる両親につくづく感謝する。  この家では家事が分担されていて、食事を作るのは僕の仕事なので、二人が外で食べてくる時やいない時は大抵抜いている。とりあえず昼食の為にご飯でも炊いておこうと一階に降りていく途中で、ヨークシャーテリアのチョコが階段に前足をかけてこちらを覗いていた。お菓子のチョコレートからではなく、ちょこんと座っていることからこの名をつけた。あんまり変わんないか。  「ごめんチョコ……今から散歩行くよ」 すっかり忘れていたことを謝ると、短い尻尾を目一杯振りながら二回返事をした。自分のご飯をセットしながらチョコのご飯とリードを準備する。流石にパジャマで行くわけにはいかないから、食べている間に部屋に戻って着替えを済ませた。
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