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降りしきる夜雨の中、ぼろぼろの一人の少女が京の町を今にも倒れんばかりに歩いていた。
「・・・・!」
少女は力尽きて倒れた。
倒れ際に何かにぶつかった。
壁?ちがう人の足だ。
上を見上げる少女。そこには鉄扇をもつ大きな男がいた。
「なんじゃこの汚いガキは!?孤児か!?」
大男の取り巻きと思われる隻眼の男が叫ぶ。
「邪魔だどけ!局長、斬り捨てますか!?」
どきたいけど、どく体力もない。少女は死を覚悟した。
「・・・・ガキ、親はいるんか?」
鉄扇の大男が図太い声できいてくる。
少女は首を横に振る。
「お前名をなんていうんだ?」
「・・・・・」
返答はない。
「名はなんというんだ!答えろガキ!!」
隻眼の男が叫ぶ。
少女は寄りかかった足から一旦離れ、ぬれた地面に小枝のような指で『さや』と書いた。
「お前しゃべれんのか」
鉄扇の大男が聞いたがもう答える気力もなかった。
「局長、こんなのほうっておいてさっさと島原行きましょうぜ!」
隻眼の男そういったか言わないかのときに、鉄扇の大男はさやを片手で持ち上げると上着をかけるように肩にかけて、夜雨の道を歩いていった。
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