86人が本棚に入れています
本棚に追加
「何を泣いているのだ?」
背後から突然、男の声が聞こえた。
この屋形に住むのは額田と乳母(めのと)と数人の侍女だけで、男はいないはず。
「何者です!?――」
恐怖に駆られながらも、勇気を出して後ろを振り返った額田であったが、その目に映るのは日頃見慣れた景色のみ。
怪しい人影などどこにもない。
今、確かに……。
「どこを見ておられる」
驚いて再度、顔を前に向けた額田の視界には、月光を背にした男の姿が。
嘘……っ、先程までは誰もいなかっ……!
最初のコメントを投稿しよう!