壱・散る桜

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  そして、ようやく男の体が額田から離れたか思うと、彼女が顔を上げた時にはすでにその姿はどこにも見当たらなくなっていた。 気が抜けて、へなへなとその場に座り込む額田。 ……夢? いや、そんなはずはない。 抱き締められた腕がまだ痛いし、吐息が触れた耳にも熱が残っている。 それから……寝着についた、男の残り香。 夢ではない何よりの証(あかし)だ。 一体、貴方は誰なのですか? なぜ、あのような辱(はずかし)めを……。    
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