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奈美曰く──
「二股と言ってしまうと何かあっさりしている気がするのね。
どっちも好きで大切にしたかったし、どちらか片方に決めるなんてできなかった…。」
どちらも同じ位に好きだったのだと言う。
だから恋愛を二つしていた…つまり──二重恋愛。
新しい言葉を作ってみても結局は二股に変わりはないのだけど、私は何となくそのフレーズが気に入った。
『で、その…二重恋愛はどれ位の間続いたんですか?』
「それがね…」
奈美は悪戯っぽい笑みを浮かべると、ピースサインのように指を2本立てて見せた。
『え?2年…ですか?』
「そうなの。案外バレないものなのね。」
思っていたより長い間続いていたのが意外だった。
しかも、奈美は更に意外な言葉を口にして私を驚かせた。
「しかも、後半の半年間は勇二と同棲してたし。」
意外な事を意外にさらっと口にすると奈美はにっこりと笑った。
本命の彼氏にバレないように付き合うだけでも大変だろうに…同棲までするなんて。
なかなか侮れない女性なのかもしれないと思った。
その時私が目の前にいる奈美に抱いたイメージは、《魔性の女》と言ってしまうと違う気がして、《小悪魔》と言うより…
──《魔女》だった。
『その同棲している間には彼氏…高橋さんには全く気付かれなかったんですか?』
「結局は…最終的にはバレたんだけど。でも…」
彼が──高橋翔が奈美と竹田の同棲を知る事となる前に、ある事件は起こった。
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