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──「映画自体は前評判の割には大して面白くなかったの。」
奈美は煙草に火を付ける。
「あの時は…隣にあの人が居るってだけで良かったのよね…。」
煙草の煙が私にかからないようにか、窓の向こうに目をやりながら溜め息混じりにフウッと吐く。
『それからお付き合いを始めた訳ですか。…でも…既に彼氏さんが居たんですよね?
そちらとは別れたんですか?それとも…
二股ってやつ…とか?』
私は疑問をぶつけてみた。
案の定、奈美の眉が一瞬動く。
大抵の場合、自分に都合の悪い話や印象が不味くなりそうな話は隠したがるので勝手にカットしているケースが多い。
だが、そこを聞いてみなければ私の取材の意味が無い。
美談でめでたしめでたし…なんて話なら初めから取材したいなんて申し入れをする事も無いのだから。
だからこうして何度か疑問をぶつけて、相手が真実を…それから本音を話してくれるようにしなければならない。
確信に迫る取材をする為には、タイミングを見計らって上手く本音を引き出す努力が必要になる。
奈美は煙草の煙をじっと見ていたが、諦めたような目で私に向き直った。
「もちろん…二股よ。」
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