二重恋愛

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朝起きて朝食を済ませると竹田が仕事へ向かう。 それを見送ると自分も身支度を整えて出勤。   途中で高橋へのおはようメールを入れておく事も欠かさない。 竹田と一緒に暮らしていながらも奈美は週に2回のペースで高橋とも会っていた。 高橋も丁度仕事が忙しくなって来た時期で、週末に会える事は少ないし、平日の少し遅い時間に食事をする程度で精一杯だったのが幸いと言えば幸いだったのかもしれない。   そんな生活をして2ヶ月程過ぎた頃から竹田の仕事も忙しくなり、だんだん帰宅が遅くなって来ていた。   その日も竹田から会社でのミーティングの為に遅くなると電話があったので、奈美は仕事仲間と飲みに出かけていた。 時間は夜9時を過ぎようとしている。 2件目のお店は竹田の会社からすぐの所だったので、帰りに寄ってもらえないかと思い、奈美は歩きながら竹田に電話をかけた。   何度か鳴らしたが出ない。 仕事中なら仕方ないと思って携帯をバッグにしまおうとした時、竹田から電話がかかって来た。   『もしもし?今…電話くれたよね?どうしたの?』   「あ…お仕事中だった?ごめんね。私も外にいたから、帰りに待ち合わせできたら…って思って電話したの。」   角を曲がれば竹田の会社が入っているビルがある。   『あー…そうだったのか。でもまだまだかかりそうなんだ。だから先に帰ってて構わないよ。ごめん。』   角を曲がり、ビルの前に立ち、見上げながら奈美が聞く。   「ずいぶん静かみたいだけど…今どこにいるの?」   『どこって会社だよ。決まってるだろ?ミーティング中を抜け出して廊下で話してるんだ。』   「そっか…まだまだかかる?ずいぶん遅くなる感じ?」   『そうだなぁ…深夜になるかもしれない。だから先に帰ってていいよ。』   「うん、わかった。お仕事中にごめんね。頑張ってね。」   電話を切り再びビルを見上げる奈美の顔が曇る。   竹田が今まさにミーティング中だと言うオフィスビルは、どのフロアも全員帰宅したのだろう…全て真っ暗で明かりがついている階などなかった───。  
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