プロローグ

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私がカフェに到着したのは約束の時間より20分近く前。 店内には若いカップルと女性グループだけで、奈美らしき姿はなかった。 少し早過ぎたらしい・・・。 入り口からも良く見える窓際の席に座り、コーヒーを注文して奈美を待った。  10分程経っただろうか・・・ 「あの・・・」 外を行き交う人々を眺めていると、不意に声を掛けられた。 振り向くと女性が一人。 『あ・・・もしかして奈美さんですか?』 私の問い掛けに女性はニッコリとして頷いた。 それが奈美を初めて見た瞬間だった。 イメージしていたのとは違い、気の強そうな美人・・・といった感じ。  (もっと弱々しい女性かと思っていたので) 35歳と聞いていたが、実際は20代後半と言っても通用しそうだ。 大抵、私の取材相手は不幸の影のようなものをどこかしらに漂わせている事が多い。 だが、奈美にはそんな影も見当たらず、むしろキラキラと輝いてすら見える位だ。 とにかく、彼女は不幸とは縁遠い印象で、本当に取材をする相手なのかと疑問に思う程だった。
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