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出会いなんて程の事でもない…と奈美は少し笑って言った。
長年続く友達グループでのイベント。
お花見や海水浴、スキー、バーベキュー等々…その度に誰かが新しい友達を連れて来るので最終的にグループはかなりの人数になっていた。
その中に彼──竹田勇二が参加するようになったのは奈美が27歳の秋、グループでのイベントも8年目を迎えたバーベキューの時だった。
最初は挨拶をしただけで特にその後会話をするでもなく、彼の印象は奈美にとって薄いものだったらしい。
《その時》までは……。
バーベキューも終わりに近づき、そろそろお開きという頃になって《その時》はやって来た。
奈美の隣で後片付けを手伝っていた友達が誤ってバーベキューのコンロを倒してしまったのだ。
しかもよりによって奈美の方へ。
「キャァーッ!!」
しゃがんでゴミを拾っていた奈美は咄嗟に逃げる事もできず、悲鳴をあげながら頭を抱え込んでギュッと目を閉じる。
ガチャーン!!
大きな音はしたものの、奈美には何の衝撃も熱さも感じられない。
不思議に思い目を開けようとした《その時》真後ろで声がした。
「大丈夫かっ!?」
恐る恐るゆっくりと目を開け振り返ると…竹田勇二だった。
すぐ近くにいた竹田は咄嗟にバーベキューコンロを奈美とは反対の方へ押し返したのだ。
まだ熱い鉄板が乗って、備長炭がくすぶっているのにも関わらず、素手で。
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