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「淳……落ち着いて下さい、笠置様を困らせてはいけませんよ」
ヴィンスが彼を制した。
淳はまだ、何か言いたげにしていたが、黙って葬送屋から顔を背けた。
ヴィンスが雪子に向かって頭を下げる。
「失礼しました。笠置様……貴女には直接、関係が無いのに、ご無礼をお許し下さい」
「いえ……けど、私もこの場に居る以上、間接的にですけど関わってます、でも何て答えたらいいか……」
後半部分を困った様な表情をして雪子がそう言うと、ヴィンスは再度、彼女に頭を下げた。
すると、黙ったままでいた葬送屋が口を開いた。
「淳が言った通りに私は傍観していただけだ……だが、手を出した所でロビンの運命は変わらないさ、違うかな?」
「……!!」
赤紫色の瞳を細めながら葬送屋は静かに語る。
淳は葬送屋を睨み付けるが、それ以上は何も言わなかった。
「あの日の出来事は、私にもアリスにも忘れられない……君の運命は大きく狂ってしまったからね」
「そうよ!あの日、全てを失った私には何も無かった、憎しみだけが生きる糧だったわ!」
アリスが椅子から立ち上がり、葬送屋に歩み寄ると苦痛そうに顔を歪めた。
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