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(でも、悲しすぎる。憎しみや悲しみに捕らわれたままなんて……)
言葉に出来ない想いは、涙へと変わった。
それを見た、ヴィンスは悲しげに目を伏せた。
ふいに、それまで黙っていた淳が雪子に目線を合わせ、口を開く。
「貴女は……アリス様の為に泣いてくれるんだな、アリス様が気に入ったのも分かるよ」
それだけ言うと、淳はヴィンスに向き直る。
「俺、先に逝きます……もう限界っぽいですから。アリス様と待ってますね」
そう言った淳の身体もアリスと同様に砂と変わっていた。
「向こうで会いましょう、淳」
淳はゆっくりと頷いた後、完全に砂となって消えてしまった。
ヴィンスは、砂となった淳とアリスを見て、そっと目を伏せた。
「葬送屋……貴方にはお嬢様の気持ちを理解する事は不可能ですね」
「否定はしないな」
「だから貴方は……嫌われるんですよ」
そう言うヴィンスの身体も砂へと変わりつつあった。
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