第十一話 「真実」

28/30
前へ
/191ページ
次へ
(でも、悲しすぎる。憎しみや悲しみに捕らわれたままなんて……) 言葉に出来ない想いは、涙へと変わった。 それを見た、ヴィンスは悲しげに目を伏せた。 ふいに、それまで黙っていた淳が雪子に目線を合わせ、口を開く。 「貴女は……アリス様の為に泣いてくれるんだな、アリス様が気に入ったのも分かるよ」 それだけ言うと、淳はヴィンスに向き直る。 「俺、先に逝きます……もう限界っぽいですから。アリス様と待ってますね」 そう言った淳の身体もアリスと同様に砂と変わっていた。 「向こうで会いましょう、淳」 淳はゆっくりと頷いた後、完全に砂となって消えてしまった。 ヴィンスは、砂となった淳とアリスを見て、そっと目を伏せた。 「葬送屋……貴方にはお嬢様の気持ちを理解する事は不可能ですね」 「否定はしないな」 「だから貴方は……嫌われるんですよ」 そう言うヴィンスの身体も砂へと変わりつつあった。
/191ページ

最初のコメントを投稿しよう!

166人が本棚に入れています
本棚に追加