第十一話 「真実」

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「何故、お嬢様があんな無茶な願いをしたか……貴方は、考えた事ないのでしょうね」 葬送屋は黙って聞いていたが、雪子には少し気になった……やがて、その意味を理解したのか、ヴィンスを見た。 「ヴィンセントさん!それって……」 雪子の言いたい事が分かったのか、彼は驚いた様な表情で雪子を見たが、彼女に丁寧に頭を下げた。 「聰い方ですね……笠置様。葬送屋、貴方には理解出来ない事でしょう、1人で永くを生きすぎた貴方には」 「ああ……そうだろうね」 声色は変わらないが、彼の赤紫色の瞳には、今まで無かった複雑そうな感情が見え隠れしていた。 ヴィンスの身体も半分以上が砂となっていく。 崩れる身体を見て彼は、僅かだが笑った。 「では、お別れです。アリス様や淳が待ってますので……さよなら、笠置様、葬送屋」 ヴィンスは、二人に深々と一礼をした……それを最期に、彼も砂と成り果てた。 「ヴィンセントさん……」 「逝ってしまったか……アリス、淳、ヴィンセント」
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