第十一話 「真実」

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雪子は、項垂れる……床に涙の雫が落ちた。 葬送屋は、冥福を祈る様に胸に手を当てながら瞼をそっと閉じた。 「人形にされた人間達の魂も解き放たれ、行くべき場所へ向かうだろう」 ゆっくりと瞼を開け、静かに呟いた。 「アリスも漸く長い眠りにつくことが出来た……彼女を慕う者たちと共に、雪子……それだけでも彼女は救われたと思わないかね?」 「分かりません……救われたのか、そうでないかなんて、ただ………最期まで誰かを憎みながら死ぬのは悲しすぎます」 雪子が震える声で言うと、葬送屋は間近にある小さな砂の山を見た。 「人間らしい答えだ、いや……君らしいと言うべきだろう。だが、その生き方は彼女が自ら選んでしまった……他の選択肢を捨ててまでね」 いつも以上に、葬送屋の声が雪子の脳裏に響いた。 (この人は、本当に感情が無くなってしまっているんだ……) 雪子が落ち着くのを見計らい、葬送屋と雪子は、主を無くした屋敷を後にした。 終
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