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「彼女はきっと、旦那と一緒に居たかった。連れていって欲しかった……けど、それすら叶わなかった。旦那に拒絶されたと思ってしまったんでしょう」
「そう言えば、〝私の気持ちを理解してない〟ってアリスちゃんもヴィンセントさんも言ってました」
雪子がそう言うと、藍は頷いた。
「旦那は、余りにも永く1人で生きてきた故に、そういう気持ちを理解出来ない程、感情が欠落してしまった……だから、分からなかった」
藍はすっかり冷めてしまった紅茶を飲むと空になったティーカップに紅茶を注ぐ。
「そんなの…」
「けど、彼女は大切な従者と共に大切な友人の元へと行けましたから……彼女の長い苦しみは終わったんです」
藍は遠い目をしながら語ると、椅子から立ち上がり、近くの窓に近寄って外を見た。
外の景色は夕焼けでオレンジ色に染まっている。
雪子と藍には、その光がいつもよりも寂しく感じた。
「旦那も少しは寂しいと思ってますよ。何だかんだ言って……彼女を気に入ってたみたいですから」
「藍さん、葬送屋の考えてる事とか分かるんですか?」
雪子が不思議そうに訪ねると、藍は目を細めて笑った。
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