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「もう帰っちゃうんですね、朝食くらい一緒にしたかったですけど…」
「仕方ないさ、分身はもう無いし……家族が起きる前に帰らないと騒ぎになるだろう」
残念そうな藍に対して、葬送屋の態度は淡白だった。
雪子は少し寂しそうな表情を浮かべる。
「はい、今までお世話になりました……あの、また会えますか?」
雪子の台詞に対して、藍が表情を曇らせた。
「雪子ちゃん、旦那は兎も角、オレとは、これが最後になると思いますよ。そんなに長くは生きれませんからね……けど雪子ちゃんに会えたのは嬉しいし忘れません」
そう言って藍は、笑みを浮かべながら手を差し出した。
「…そうですか、残念です」
雪子は寂しそうな表情で藍を見た後、藍と握手を交わした。
「元気でいて下さいね、藍さん……さよなら」
「雪子ちゃんこそ。さよなら」
二人が別れの挨拶を済ますのを見届けた後、葬送屋は雪子を連れて屋敷から姿を消した。
雪子を自宅近くまで連れていくと……近所にはまだ人の気配は無く、静まり返っている。
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