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「魔法って便利ですね……あっと言う間に自宅までなんて」
「私の屋敷に行った時にも同じセリフを言っていたな」
相変わらずの薄ら笑いを浮かべながら葬送屋が言うと、雪子はそうでしたね、と小さな声で呟いた。
「雪子…」
ふいに葬送屋が名を呼んだ。
「君がいつか最期を迎えるまで、私とはお別れだ。その時まで大切に人生を生きたまえ……私は、世界の人類が全て死に絶えても生き続けてるからね」
「……葬送屋さん」
自分が死期を迎える時には、目の前に居る黒衣の青年に看取られながら逝く……だが、彼には永遠を生きなくてはならない。
それは、とても悲しく辛い運命……自分には、どうにも出来ないのが雪子には歯痒かった。
自分も、そして藍もいつか彼から去ってしまう。
「雪子、私は別に悲観はしてないよ、不便な点はあれど、それなりに退屈はしないさ」
突如、雪子の心情を見透かした様な言葉を葬送屋は口にした。
驚いた表情で雪子は葬送屋を見上げる。
「君は考えてる事が分かりやすいからね、そこが面白くもあるのだがね」
「…あの、最後に1つだけ聞いてもいいですか?」
「何かな?」
「長い時を生きる葬送屋さんは……何を考え、目的として生きているのですか?」
雪子は真剣な表情で彼を見ながらそう尋ねた。
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