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葬送屋は、暫し沈黙したのち、口元にある笑みを更に深めた後に答えを出した。
「目的はないさ、何しろ先の無い人生だからね。ただ私は常に予想外の事を求めて生きていると言えばいいかな」
「……予想外の事?」
「先の事が分かる事や、予想通りに進む日常は退屈そのものだ。予想を覆す出来事が私は好きなのだよ」
そう語る彼を、雪子は怪訝な表情で見ていた。
雪子の疑問を察したのか、彼は笑いながら続きを語る。
「若い君には理解出来ない考えだろうね……普通の人間にとって予想外の出来事は、厄介な障害としてしか考えられないのだから。ああ、それが悪い事ではない、むしろ普通なのだろうから」
葬送屋は、そう述べる。
雪子には、深くは理解出来ない内容ではあったが、彼の性格から考えて彼らしい生き方なんじゃないかと思えた。
彼ほど長く生きたら、日常では満足出来ないのも無理もないだろう……そうでもしないと、いくら彼でも壊れてしまいそうな気がした…。
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