第十二話 「終幕」

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葬送屋が屋敷に戻ると藍が屋敷の荷物を片付け終わった直後だった。 家財には布が掛けられ、部屋は綺麗に掃除がされていた。 リビングの真ん中に2つのトランクが置かれている。 「お帰りなさい、旦那」 藍が葬送屋を出迎えるが、彼は黙ったままリビングに入り、まだ布が掛けられていないソファーに座った。 ソファーの傍らにある小さなテーブルには、あの黒い箱が置かれている。 「旦那?」 「ああ……ただいま」 「どうしました?珍しくボンヤリと……あ、雪子ちゃんは家に帰れましたか?」 藍が葬送屋と迎え合わせに座る。黒髪の従者は穏やかな表情で主を見ていたのに対して葬送屋は薄ら笑いを返した。 「ああ、無事に帰ったさ。今日からは普通の女子高生生活に戻れるさ」 葬送屋は足を組むと静かに語る……。 そんな彼を見ながら藍は、優しげな表情で主を見た。 「旦那も雪子ちゃんを気に入ってましたから……寂しいですか?」 「彼女の様な逸材にはなかなか会えないのが残念なだけだよ。次に会うのは随分と先だからね」
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