白の君に捧げる福音。

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「あら、早かったわね」    扉を開ければ、少女は白い裸体を晒していた。  しかしそれを恥じらう様子もなく言い、白いワンピースを身に纏い青年に向き合った。   「有り難うございます」    褒められたという事実に、一瞬感動で動けなくなる。  しかしすぐに我に返り、長い手足を折り畳み少女の眼前に跪いた。    少女の身丈はその年齢を考慮しても小さく、人並みより長身の青年はそれでもなお少女と変わらない程度の目線になる。    少女の容姿は白い。先天的な物により色が欠けていて、髪も肌も、透くような白色をしている。  唯一、その瞳だけが血の如く鮮やかに赤い。  その上で少女は、病的なまでに白を好む。  衣服も調度品も、身に近い者(それは相当に少数だが)の身を包むものも。  しかし、青年にだけは黒を強要した。衣服も持ち物も、一切の曇りも妥協も赦さず黒色に染め上げたのだ。  白い白い部屋に不釣り合いな黒は、真白い紙に落とされた墨を連想させた。
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