白の君に捧げる福音。

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「服を脱いで頂戴」    唐突に少女が言った。  青年は解りました、と低い声で言うと音もなく立ち上がり、鴉の濡れ羽のように黒いスーツに手をかけた。  少女がこの種類の命令をしたのは一度ではない。決して多い回数でもないが、そのたびに少女は淫猥な命令をその上に重ねた。何の意味もない、ただの興味、なんとなくという理由で。  パサリ、と漆黒のスーツの上に同色のネクタイ、更にシャツが重ねられる。 続けてベルトのバックルに手を掛けようとした処で、少女から制止の声が発せられた。    「それでいいわ。そう、それで」    少女が青年に歩み寄る。  少女の年齢が青年のちょうど半分であることを考慮してもその身長差は大きく、青年はすぐに視線が近付くよう身を屈ませた。  スルリと白い輝きを持つ腕がワンピースの肩口から伸ばされ、そして青年の髪に触れた。
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