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33小節が終わった。
これより未知なる領域に入る。
大きなフィンガリング…
小さな血しぶきが切創部位からあがった。
それでも弾き続ける瀧澤。
何という精神力。
何という技術力なのか…
研ぎ澄まされた感覚の中で、音と空気がこれ以上のない配合で重なり、溶けこむのが分かる。
痛みと快楽が交錯するステージの上で、霞んでいく瀧澤の視界が、脳内で分泌する快楽物質により意識を保たせようとしていた。
今まで幾人もの首を撥ねてきた死神……
そいつが瀧澤の襟首を掴んで闇に手繰り寄せ
今度は鎌の刃先を瀧澤の首許に這わせて囁く。
マケルコト ハ ユルサレナイ
オマエ ハ シカバネ ヲ コエテキタ
ココデ チルコト ハ ユルサレナイノダ
弾くも地獄…
引かぬも地獄…
瀧澤は、ぼやける視界の中で瞳との思い出を回想していた……
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