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「ね、姉さんを傷つけるな!」
男の子は"もう1人"に向かって叫んだ。
凄んではみても足が震えているのには嫌でも気付く。
怖くて顔を見ることもできない。
"もう1人"の体がこちらに向く。
髪を掴んでいた手を放すと女性の頭が地面に鈍い音と共に激突する。
「そこにいたのか・・・・零」
"もう1人"の声に少し喜びが含まれている気がした。
その声に再び体が強ばるのを感じるのと、女性が顔を上げたのはほぼ同時だった。
「零・・何で・・・・早く、逃げて!」
か細く消え入りそうな声は零を動かすのに十分ではなかった。
"もう1人"が背中に携える大太刀の柄に手をかけたからだ。
死への恐怖が体の自由を奪った。
女性は最後の力を振り絞って零との間に割って入って零を抱いた。
「邪魔だ楓!!」
"もう1人"が名前を呼んでも女性は退かなかった。
一瞬の沈黙の後、"もう1人"の柄を握った腕は楓の背に振り落とされた。
男の子に降りかかる鮮血。
「ね、姉さん・・・・?」
呼んでも答えてくれない。
女性の体重が男の子にのしかかり、そのまま仰向けに倒れ込む。
意識を保つことが出来なくなった。
視界が歪む寸前、見たものは不覚にも頬に傷のある男の顔だった。
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