夢覚める青年と落とされた火蓋

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男はシャワーを浴び、タオルで体を拭く。 薄いシャツに黒いズボンを履き、鏡の前に立つ。 そこには端正な顔立ちの青年が写っている。 黒い短髪に漆黒の瞳、その瞳は少し虚ろんでいた。 「今日で・・・・終わる・・・・」 男は小さく呟く。 首には折り畳みのペンダントが掛けてある。 男はそれを開く。 そこには椅子に座る女性と横に笑顔で写る男の子がいた。 「姉さん・・・・」 男はペンダントを閉じ、再び鏡を見る。 そして両方の頬を手で叩いた。 「しっかりしろ・・・・五月雨 零(サミダレ レイ)・・・・!」 男の瞳は生気が満ちる。 不意にドアから声がした。 「零・・・・もうすぐ時間よ・・・・準備はできているの・・・・?」 男はめんどくさそうに声に答える。 「あぁ、今やってるとこだ・・・・いちいち来んじゃねぇよ!」 しばしの沈黙の後、ドアの前から気配が消えた。 それを確認して男は準備を始めた。
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