夢覚める青年と落とされた火蓋

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殺すことに、何の躊躇いもない。 命の重さは、理解できない。 だから剣を持つ。 躊躇なく剣を振るい、当たり前のように鮮血を被る。 今回の闘いもそうなるのだ。 限りにない命を奪うことになる。 それでも、自分の目的のためなら安いものだ。 自分だけ良ければいい。 自分だけ生きらればいい。 自己中心的な思考に基づく、自己防衛の本能。 「零、お前はこの崖から奇襲を仕掛けてもらう。合図かあったら、俺達と――」 五月蝿いから殺した。 素早く利き腕で剣を引き抜き、有無を言わさず相手の首を切り裂く。 戦争だから、昨日の晩に刃を磨いでおいた。 切れ味は最高、必中の死を実現させる。 「おまっ!?なにやってるんだ!」 同じ部隊に配属された人間達が零に群がり、或いは今殺した部隊長に駆け寄っていく。 無数の批難の言葉と共に胸ぐらを掴まれ、さらに罵倒される。 剣を抜いて、零に刃を向ける者もいる。 「――――なぁ・・・・」 零は小さく呟いた。 だが騒ぎ立てる人間が多くて、誰もその言葉には気が付かない。 だから、また殺してやった。 殺意で示さないと、わかんないらしいから。 「うるさいなぁ!!」
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