3・君に送る初めての言葉

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「あと半年の命なの」 冗談かと思うほどあっさりマリアは言った。 「え?誰が?」 思わず聞き返す。 「私!なんだか難しい病気みたい。むしろ、ここまで生きれたのが不思議みたいよ?」 「それは…」 言葉が喉につまって出てこない。やはり冗談としか思えない言い方だ。 「言っておくけど、慰めなんか要らないわ。そう悲観的でもないのよ。16年は生きてこれたのだし、あと半年も時間がある。これって幸せなことなのよ」 後半はまるで自分に言い聞かせてるような響きだ。 「後悔はないわ」 マリアの瞳には決意の影が揺れる。その瞬間、僕の内面を激情が突き上げるのがわかった。 「嘘だね」 「え?」 今度は彼女が驚く番だ。 「君はまだ希望にすがっている。だから、ここに来たんだ。」 一瞬少女が息を飲むのが聞こえた。そして、彼女の頬に紅色がさす。
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