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「違うわ!そんなことはない!」
「違わない。君は神の存在を心から信じたがってる。病気を治癒してくれる奇跡を!」
「違うったら!」
マリアは目に涙を浮かべ、大きくかぶりを振った。全身で拒絶する。そのことがかえって僕の言葉が真実であることを肯定していた。
ーやめておけ。ー
僕の良心が忠告するが、溢れ出す言葉は歯止めがきかず、さらに加速していく。
「残念だったね!そんな便利な存在はいないんだよ!僕も神も誰ひとりとして救えないんだ!君に与えられるのは、何の役にもたたない綺麗な言葉だけだよ」
「…っ!」
次の瞬間僕の頬に熱い衝撃が走る。マリアが思いっきり平手打ちをしたらしい。
「嫌い!」
瞳が溺れるんじゃないかというほどの大粒の涙を流し、マリアは僕に背中を向け走り去った。
礼拝堂に静寂がもどる。
僕はひりひり痛む頬に手を当てながら、十字架を見上げた。
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