3・君に送る初めての言葉

3/3
前へ
/48ページ
次へ
「違うわ!そんなことはない!」 「違わない。君は神の存在を心から信じたがってる。病気を治癒してくれる奇跡を!」 「違うったら!」 マリアは目に涙を浮かべ、大きくかぶりを振った。全身で拒絶する。そのことがかえって僕の言葉が真実であることを肯定していた。 ーやめておけ。ー 僕の良心が忠告するが、溢れ出す言葉は歯止めがきかず、さらに加速していく。 「残念だったね!そんな便利な存在はいないんだよ!僕も神も誰ひとりとして救えないんだ!君に与えられるのは、何の役にもたたない綺麗な言葉だけだよ」 「…っ!」 次の瞬間僕の頬に熱い衝撃が走る。マリアが思いっきり平手打ちをしたらしい。 「嫌い!」 瞳が溺れるんじゃないかというほどの大粒の涙を流し、マリアは僕に背中を向け走り去った。 礼拝堂に静寂がもどる。 僕はひりひり痛む頬に手を当てながら、十字架を見上げた。
/48ページ

最初のコメントを投稿しよう!

93人が本棚に入れています
本棚に追加