93人が本棚に入れています
本棚に追加
「主の御名において、貴方を許します。二度と同じことを繰り返さないようになさい」
「ああ、ありがとうごぜぇます、牧師様!主よ!もう二度と盗みはしません!」
赤茶けた顔の男は眼にうっすら涙を浮かべ、自分の誓いが堅いものであることを示すように、祈りの手を強く握りしめている。懺悔を済ませた男は憑き物が落ちたかのように、清々しい顔で礼拝堂を後にした。
(あれは、またやるな)
聖なる父性を湛えた笑顔を浮かべながら、僕は内心独りごちる。
(こんな告白で許されるなら安いものだ)
辺境のど田舎で布教を始めて3ヶ月。初めは辟易していた村人達も、神の救済を求めて教会に集うようになってきた。昔から信仰されていた土地の神よりも、どんな罪にも赦しを与える新しい神の方が都合が良いってわけだ。
最初のコメントを投稿しよう!