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幸い、黒髪に翡翠色の瞳を持つ僕は、神の使いにふさわしい神秘的な雰囲気に見えるらしい。
馬鹿だな。神なんて存在するかどうかも解らないのに。
神に仕えてから何度目か分からないため息をつき、僕は懺悔室のドアを開ける。
「きゃっ」
「!」
かすかな悲鳴が聞こえ、すっかり油断していた僕は目をまるくした。
「ああ、これは失礼しました。懺悔室に御用が?」
そこには、栗色の長い髪 の少女が立っていた。こぼれそうな大きな瞳、白いワンピースをふわりと纏った様は、不信心者の僕にも天使に見えたほど可憐だ。
「それとも、私に用かな?」
呆然と僕の顔を見つめている少女に問う。すると少女は凜とした眼差しで僕を真っすぐ見据えた。
「いいえ。だって、私、神様なんて信じてないもの」
見た目通りの涼やかな声。けれど、発した言葉は有無を言わせない鋭い響きを放っていた。
それが、君との出逢い。
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