2・君と語る物語

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少女の名前はマリアといった。聖母と同じ名前だと告げると、彼女は眉をしかめた。 「あまりピンとこないわ。」 思わず口元に笑みがこぼれる。宣教師の立場としては優しく諭すべきなんだろうけど、彼女の率直な言葉のほうが聖書よりも意味あることに思えた。 「主を信じないというならば、君は何故ここに?」 笑顔のまま、少し意地悪な質問をしてみる。 「…」 少女は一瞬視線をそらすと、礼拝堂の壁面に据えられた十字架に目を向けた。 「興味があったの。人を救う神様というのが、どういうものか。」 「なるほど。興味は満たされたかな?」 「…あまり」 マリアは肩を軽くすくめた。 「やっぱりよく分からないわ。あの大きな十字架がどんな力を持つのかも。」 「ならば日曜のミサに来ると良いよ。聖書の説法もしているから。」 僕は何度も繰り返してきた義務的な台詞を口にした。
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