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表情を読み取りにくくするような分厚い眼鏡をかけ、白衣を身に纏う男が呟いた。
そしてその男の目の前には真っ白なベッドがあり、少女が安らかな表情で眠っている。
――それはとても異様な光景だった。
二人しかいないその部屋は機械や鉄片、他にも様々な器具…と、専門知識のない素人が触るには危険そうなもので散らかっており、当然人が眠るには到底適しない場所だ。
更には怪しげな男とまだあどけない少女という組み合わせ。
…にも関わらず少女には目を覚ましたり、寝心地悪そうにする、といった様子は一切見られない。
そしてその少女もまた風変わりで、首には猫の鈴を付けたチョーカー、頭には髪色と同じ紫味のある灰色の猫の耳と尾を持っていた。
――それは人工のものには到底見えない。
とても滑稽だ。
「さて、後は電源かな」
再び男は呟き…少女の左耳の裏に軽く触れた。
きぃぃぃぃん……
甲高い機械音。
「――さぁ、起きるんだ。
もう動けるだろう?」
――ぴくっ
少女は男の言葉に答えるように、耳を動かした。
…猫の耳を。
「…ん………」
少女は目をうっすらとだけ開け、眠そうに唸った。
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