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前半のほうでのエピソード。
トムがポリー伯母さんから、いたずらの罰のため「塀のペンキ塗り」の仕事をいいつけられます。
土曜日。
せっかくのお休みなのに、塀のペンキ塗り。
かねがね今日のために計画していた面白い遊びが、すべて消えてしまう。
塀をすべて塗るには、子どもにとって、一日仕事。
最初は嫌々ペンキを塗る。
ふと、手を休めてみると、塗らなければならない塀は気が遠くなるほど残っている。
トムは、ポケットの中に入っている、玩具やさまざまなもので通りかかる友達を買収して、代わりに塀塗り作業をやってもらおうと考えます。
でも、彼がもっているモノではせいぜい、
30分かわってもらうのが限度。
その考えをあきらめる。
その時、ふと、彼の頭にすごいアイディアが浮かぶんです。
トムは静かに刷毛を手に取り、仕事をはじめます。
まもなく友達のベンが通りかかる。
トムはベンに気づかぬふりをして、仕事に熱中しているふりをする。
ベンはトムに言います。
「おい、だいぶへこたれているようだな」
トムは返事をしないで、今塗ったばかりの刷毛のあとを、画家の目つきで眺めるんです。
「どうしたトム、仕事を言いつけられたんだね」
「なんだベン、気がつかなかたよ」
そうです、トムはこのペンキ塗りを楽しんでやっているふりをしているんです。
ペンキ塗りが好きか?
とベンに聞かれたトムはこう答えるんです。
「好きじゃいけないって理由はないと思うがね。
塀を塗るなんて機会が、子どもに毎日恵まれていると思うかい?」
そして、またペンキ塗りの作業に戻るんです。
ベンはその動きを仔細に見ているうちに、
興味がわいてきて、
心を奪われ
たまならなくなり、ついに声をかける。
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