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「美佐、美佐、美佐美佐美佐美佐…」
そう狂ったように美佐と連呼する宮。彼の頭の中に嫌な考えばかりが過っていく。
「っ、美佐ぁああ!!」
「風邪、引きますよ?」
突如、雨の中突っ立っていた美佐に男性が声をかけ、自分の傘を美佐に傾けた。
「……………ありがとう、」
美佐は長い沈黙の後、小さな声でお礼をした。俯いたまま顔を上げずに。
「…美しい人、何故泣いているのです?」
男は美佐に問う。
「悲しいからよ」
「何故ですか」
「雨に良い思い出がないから」
「貴女は優しい方なのでしょうね」
そう言って男は美佐と目線を合わせた…と、言っても男は帽子を深く被りサングラスをしている。
美佐には殆ど男の顔が判らない。唯一判るといえば男の柔らかそうなシルバーブロンドの髪のみ。
「…貴方は……?」
「知らなくていいのです。知らない方がいい…」
男がそう告げた後、美佐は腹部に痛みを覚えた後に意識を手放した。
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