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薄暗い閉所、真ん中には東方の電気式暖房器具「コタツ」が鎮座する。なんでも、この「コタツ」とやらは、冬場のヒトとネコを、下部に装着された装置に電流を流すことにより発生する電磁波によって快楽の海に溺れさせ、圧倒的な中毒性とその禁断症状で完全に骨抜きにする一種の強力な呪いを使う危険な道具だそうだ。とか、誰かが言っていたような気がする。俺にはただの炬燵だが。
その「コタツ」の上には、科学的に安定するという半永久的かつ絶対的な性能を持ち、その性能ゆえ太古の昔より使われていたというセラミックス製の小皿が置かれ、これまた絶対素材セラミックスの大鍋が…これは近代技術の結晶、太古の人類が汗水垂らして摩擦熱を利用し、やっとの思いで起こした炎、それを指一つによるプッシュ作業で一瞬の点火を可能にした究極の道具「ガスコンロ」、その上に大鍋がセットされていた。東方の究極点火装置「ガスコンロ」、これは液化ガスを用いた圧縮ボンベを交換すればいくらでも使い回しの効くスグレモノ。災害の時にはこいつの便利さを人類は噛み締めることになるのだ。
呪いの兵器「コタツ」の上にならぶ絶対素材達、そして究極点火装置「ガスコンロ」。それは、東方の…、いや、とりあえず我が黒伊代家の「ナベ」を喰うための準備が完全に整えられている食卓だ。いや、正確には食卓だったというべきだろう。
今やその食卓は戦場と化していた。俺の音波攻撃、正確には罵倒という名の凶器が我が弟に殺到する。
「ポン酢を忘れた罪は万死、いやもう完全抹消に値する。森羅万象の理から抹消されればいいんだ。低能イカレポンチの黄色いサルめ」
言葉の刃は弟の心に突き立つも刺さりはしなかった。奴の精神干渉結界は奴の精神年齢に反比例して異常な強度を誇る。まさに難攻不落の老山龍である。
「黙ってよ、人に任せて動かない家庭寄生虫よりはマシだよ。そんなに言うなら自分で行けば?」
抵抗には悪意の毒が塗られていた。もちろんそんなもの俺に擦るわけもないが。
「最初によろこんで材料を買いに走ったのはお前だろうが。サルがメモも持たないでよくこれだけ買ってこれたものだ。うむ、考え直してやるか、やはりポン酢はいい。誉めてやるぞサル。喜べ」
「う、うるさいッ!!」
さて、単純で無能なモノほど扱いやすいと聞くが、まさにコイツが生き字引だな。
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