第二鬱「一○五の代償」

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我が黒伊代兄弟の放課後、俺が高校からの帰り道の途中に我が弟である黒伊代糸吉の通う中学を訪れ共に帰る。まぁ、俺たちは普段は仲のいい普通の兄弟なのだ。そういうことだ。 今日は二人でコンビニに寄った。なんでもないただのコンビニに。 そこで買い物をした。何気ない間食だ。 弟と合わせて計420円、二人とも105円の品を2つづつだ。 妙に店員の応対がよかったのと、420円を小銭ちょうどで払えてしまった事から、よくないことが起こりそうだと悟った。   弟が紙パックを開けようとするも、飲み口が開かず、結局指でほじくって開けた。 「あれだな、1リットル物は安いし美味いが上手く開かないのが欠点だな。あ、お前が不器用なだけか?」 ふと、見るとストローの長さが圧倒的に足りず、パックの中に落としてしまった弟がいた。 「ぬううぁ………」 飲み口に指を突っ込むもひっぱりだせず。 「ぷっ」 思わず安売りでいつもよりさらにお得になっていた紙パック牛乳を吹いてしまった。 「笑うな!」 顔を真っ赤に染め上げ、無邪気に怒りをぶつけてきた。あぁ、弟よ、お前が妹ならよかったよ。 「ま、アレだな、全て納得のいく物は存在しないわけで」 俺の牛乳には何があるかな。 「今思ったよ」 やっとストローを取り出した弟がうんざり顔で吐き捨てた。 結局、俺は何事もなく牛乳を飲み終えた。 家に帰ってから、買っておいたミルクデニッシュを頬張りながらニュースを見ていた。 『また食品問題です、〇〇乳業が期限切れの生乳を………問題の商品は………会社は自主回収を………』 テレビに映っていたのはさっき俺が飲んでいた牛乳だった。 「どんまいっ」 弟が哀れみの欠けらもない言葉を笑いを堪えながら掛けてきた。 「………うるさい」 返す言葉がなかった。 ニュースは続いていた。 『また、この会社は、複数の業者に牛乳を………』 俺の食っているミルクデニッシュの製造会社の名前があった。 「ぶはっ、やべぇ、災難すぎるなっ兄貴!」 げらげらと弟が転げ回っていた。 「………」
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