第三鬱「本能の趣くままに」

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平日の昼。ちょっと変わった教育カリキュラムを除けば、何の変哲もないただの公立高校。その食堂に俺、黒伊代糸冬はいた。隣に友人が二名いる。 一人は美味そうにカレーを喰っていた。同じクラスの中でも相当仲のいい一人だ。 もう一人はうどんをこれまた美味そうに啜っていた。隣のクラスの人間だが、部活動の好でいつの間にか仲良くなっていた。 そんな二人が食欲を満たす中、俺は一人でその光景を眺めていた。何故か?決まっている、親より支給された昼食代を着服する為だ。金の為なら食欲はある程度抑えられる。 とはいえ、流石に目の前で食事をされるのはいささか食欲を増進させられるため、仕方なくいつも持ち歩いているカフェインやLメントールをソルビトールやアスパルテーム・L─フェニルアラニン化合物といった甘味料と微粒酸化ケイ素やショ糖エステル等で固めた錠剤をプラスチック容器より二錠程取り出して口に放り込んだ。普段は眠気覚ましとして服用するだけだし、量も錠剤二粒だけだったので、結局、空腹の俺は今まで以上に虚しい空腹感とそこから来る嘔吐感に苛まれた。 「…美味そうだな」 ボソリと、しかし確実に隣の二人に聞こえる音量で呟いた。 「ん?ああ、美味いぞ」 うどんを啜る箸が止まる。切羽詰まった俺の表情を見てもなおこの反応である。流石、ハマーといったところか。ちなみにハマーとはあだ名である。勿論日本人だ。 「フフッ」 カレーをルーだけ残して、爽やかな笑みを浮かべるシモンは、悪戯な笑いを俺に向けてきた。それは嘲笑にもとれたが、彼は純粋に笑っているのだろう。俺に対する哀れみか、哀れみなのか、チクショウ。あ、ちなみにシモンとは(ry 「………」 もうダメだ、空腹で目が霞む。わけでは無いが、いやむしろ今さっきの錠剤で覚醒状態だ。下のほうが元気にならないか心配だぜチクショウ。 俺は長机に突っ伏した。空腹が癒えぬなら、食欲が満たされぬなら、と他の欲求を埋めようといらぬ思考が巡る。それにしても最近の女子高生は発育がよろしゅうおまんなぁ…フヒヒ。っと、まったくけしからん。 睡眠欲も薬の効果で無理矢理抑えられた今、残るは性欲のみである。とはいえ、こんな堕落した俺にも以外に彼女はいたりする。ここで不純な考えをするのはよくないと理性が押さえ込む。 やはり、食欲を満たすしかないのか。 俺の中で凄まじい葛藤が起こる。
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