家族

3/9
14423人が本棚に入れています
本棚に追加
/86ページ
「……」 お母さんとお兄ちゃんを前にして、私達三人はさっきからずっと顔を伏せていた。 真実を全て話して、私達の決意を話したから。 二人は黙って私達の話しを聞いてくれたが、話し終えても口を開いてくれなかった。 …当たり前だよね。 信じられない話しばかりしてる。 二人に嘘をついて…騙してきた事に変わりはないのだから。 お父さんはずっと謝っていた。 全て自分が悪い、二人を認めてくれ、と。 黙っている二人は…一体何を思っているのか。 私には想像すらもできなかった。 沈黙が、胸を締め付ける。 カタン…。 不意にお母さんがゆっくり席を立つ。 慌ててお母さんの顔を見上げると、涙でぐちゃぐちゃだった。 「…」 お母さんは、何かをこらえてながら手を振り上げる。 私が目を瞑った瞬間。 隣でパチンと音がした。 痛く…ない? そっと目を開けると、頬を赤くしたお父さんが見える。 お母さんはお父さんを見下ろしたまま口を開いた。 「どうして…私に相談してくれなかったの!?そしたら遊里が辛い思いをしなくて済んだかもしれないのに!!」 泣き叫ぶ、という表現が一番近いと思う。 お母さんは言うと倒れるようにソファーに腰を預けた。 「すまない…」 お父さんはまた頭を下げる。 「俺だって…長男なんだから…相談くらい…。遊里が一人で頑張ってたなんて…」 お兄ちゃんまでもが目に涙をためて訴えた。 「違うの…私が、心配させたくないから二人には言わないでって…お願いしたの。」 私が言うと。 二人は深いため息をつく。 「結城さん、でしたっけ?」 お母さんが今度は旦那様を睨みつけた。 「はい、結城海斗と言います。」 旦那様は立ち上がって頭を下げる。 「貴方のした事…許せないわ。」 「同感だ。」 お兄ちゃんまで旦那様を睨みつけて、また沈黙が訪れた。
/86ページ

最初のコメントを投稿しよう!