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「……」
お母さんとお兄ちゃんを前にして、私達三人はさっきからずっと顔を伏せていた。
真実を全て話して、私達の決意を話したから。
二人は黙って私達の話しを聞いてくれたが、話し終えても口を開いてくれなかった。
…当たり前だよね。
信じられない話しばかりしてる。
二人に嘘をついて…騙してきた事に変わりはないのだから。
お父さんはずっと謝っていた。
全て自分が悪い、二人を認めてくれ、と。
黙っている二人は…一体何を思っているのか。
私には想像すらもできなかった。
沈黙が、胸を締め付ける。
カタン…。
不意にお母さんがゆっくり席を立つ。
慌ててお母さんの顔を見上げると、涙でぐちゃぐちゃだった。
「…」
お母さんは、何かをこらえてながら手を振り上げる。
私が目を瞑った瞬間。
隣でパチンと音がした。
痛く…ない?
そっと目を開けると、頬を赤くしたお父さんが見える。
お母さんはお父さんを見下ろしたまま口を開いた。
「どうして…私に相談してくれなかったの!?そしたら遊里が辛い思いをしなくて済んだかもしれないのに!!」
泣き叫ぶ、という表現が一番近いと思う。
お母さんは言うと倒れるようにソファーに腰を預けた。
「すまない…」
お父さんはまた頭を下げる。
「俺だって…長男なんだから…相談くらい…。遊里が一人で頑張ってたなんて…」
お兄ちゃんまでもが目に涙をためて訴えた。
「違うの…私が、心配させたくないから二人には言わないでって…お願いしたの。」
私が言うと。
二人は深いため息をつく。
「結城さん、でしたっけ?」
お母さんが今度は旦那様を睨みつけた。
「はい、結城海斗と言います。」
旦那様は立ち上がって頭を下げる。
「貴方のした事…許せないわ。」
「同感だ。」
お兄ちゃんまで旦那様を睨みつけて、また沈黙が訪れた。
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