家族

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お母さんの方を向き直り。 「…お母さん、本当にごめんなさい。黙ってた事…」 目を見て言った。 お母さんは優しく笑い、私の頭を撫でる。 「遊里が辛かった時に、何もしてあげられなかった事が辛いわ…。でも、遊里が幸せならそれで良いの。遊里が笑っていられるのなら…それにね、孫ができるのも楽しみだわ。」 本当は複雑なはずなのに。 私は嬉しくてお母さんにぎゅっと抱きついた。 「お母さんになる子が…お子ちゃまなんだから。」 クスクス笑い、お母さんも抱きしめ返してくれる。 「ただし、お父さんは来月からお小遣い半分ね!!」 「…謹んでお受けします…。」 三人で声を合わせて笑い合い、手を繋いで眠りについた。 一週間後。 私は正式に屋敷に引っ越して来て、大平さんにえらく喜ばれた。 「お嬢様、私は一生お嬢様の側におりますから!なんなりとお申し付け下さいね!!!」 握手した手をブンブンと振りながら言う大平さんに笑ってしまう。 「はい、よろしくお願いします!」 「ほら、感動の再会はそのくらいにして…おいで、遊里。」 旦那様に差し出された手を握り、「はい。」と笑顔を返す。 旦那様も目を細めて手を握りしめてくれた。 旦那様の部屋につくと、そこには一枚の紙が置いてあり、私はそれを手に取ると顔が綻んでしまう。 既に旦那様の署名捺印のされたそれを机に置き私もペンを走らせた。 「これで、私達も家族だ。」 旦那様の言葉に大きく頷き最後にハンコを押す。 『婚姻届』 そう書かれた紙はなんだか輝いているようにも見えた。 「旦那様…旦那様のお母さんとお父さんには…」 「いや、今忙しくて時間が取れないらしい。でも喜んでくれていたよ。今度ゆっくり会いに行こう。兄さんにも。」 私はホッと息をつき旦那様に紙を渡す。 その後二人で婚姻届を出しに行き、私達は正式に夫婦となった。 夕食の時間になり、向かい合って席につく。 自然と笑みがこぼれてしまう顔を必死に直しながら私はご飯を頬張った。 「…よく食べるな。」 旦那様がひいている。 「当たり前ですよ!なんてったって二人分ですからね!」 私はご飯を口に運び言い切った。 「…太るなよ。」 「旦那様私が太ったら嫌いになりますか?」 ちょっとあせりながら聞く。 旦那様は吹き出してしまった。
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