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『もしもし?久しぶりだね。俺、わかる?』
初めて聞く電話越しの声に舞い上がって、見えもしないのにウンウン頷いた。
記憶の中よりも大人になって、低く響く声。
…何を話したのかも覚えていられない程の緊張の中…
手の中には約束の時間と場所のメモ。
『アイツも一緒に遊びに行こう』
…それが彼の言葉だった。
そう。
実は十年前…あたしは別の人が好きだった。
彼の、親友…好きだった人の隣にいた人を好きになる…
我ながら人の気持ちのうつろいやすさに呆れて、掠れた笑い声が出る。
初恋は実らない。
そんなジンクスそのままに、伝える事さえ出来ずに終わったけど…
あたし達は仲良しだった。
『あの頃を思い出して遊ぼう。』
彼はそう言ったけど…あたし達はもうあの頃とは変わってきているんだ。
無邪気には過ごせない。
戸惑いながらも…あたしの頭の中は、その日の為のコーディネートでいっぱいだった。
…あの高くて諦めたワンピース…やっぱり買っちゃおうかな。
思い切って美容院にも予約を入れよう。
…その日の夢は、いつもの彼の隣にあたしがいた。
真新しいワンピースに柔らかなウェーブをかけたはにかんだ笑顔のあたしが。
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