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…あれから一度も夢は観なくなった。
あたしの憧れたチャペルで…今日、彼は結婚する。
…あたしではない彼女と。
「…いーのかよ、言わないままで?」
いつの間にか隣に立っていた、昔好きだった彼が…小さく問いかけた。
「…知ってたの?」
「見てりゃわかるよ。」
…そっか。
ため息を返事がわりに、笑いかけた。
「いーんだよ、これで。」
…思っていたより、ショックは受けてない自分がいる。
不思議な夢。
なんだかこの為に見続けてた気がするんだ。
接点のまったくない二人を結び付ける為に。
つらくないって言ったら嘘になる。
でも…彼の笑顔が夢の通り幸せそうだから。
これでいーんだよ、きっと。
「いーんだ。もっといー男見つけるし。あたしの魅力をわからない男なんてこっちからお断り!」
…願わくばこんな強がりが胸を痛ませずに早く言えるよーになりますように。
祝儀用ネクタイを緩ませながら彼があたしの肩を抱いた。
「どう?パターン通り余りモノ同士でくっついてみる?」
…それも悪くないかもな。
こっそりそう思いながらも舌を出して彼の手から抜け出した。
…今度の恋は現実の男の子としよう。
手を触れられる距離で。
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