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とある森の中、というか、
「魔の森」と人々が呼んで恐れている森の奥深い場所で、
1匹の狼が、途方に暮れていた。
『何てこったい!!
魔狼の、しかも力有るモノの証である銀の毛を持つあたしが、
いかにもおいしそーな、赤ん坊に毛が生えたよーな人間のガキを目の前にして、
手も足も出せないなんて!!』
彼女の目の前には、彼女曰く、
「赤ん坊に毛が生えたよーな」
3歳ぐらいの人間の男の子が泣いていた。
『ちくしょー!
これが、あたしを見て怯えて泣いてるってんなら、
まだ対処の仕様もあるってのに』
そう、その子は、彼女に怯えて泣いてるのではなかった。
そもそも、彼女の存在に気付いているのかさえも、定かではない。
彼女がここに来る前から、顔を上げる事なく泣いている。
彼女は、その泣き声に呼ばれる様に、ここに来ていたのだった。
『どーしたモンかねぇ・・・・・・
人間の、しかも子供のヤワな足で、
こんな森の奥まで、裸足で来られるわけもないし。
こりゃ、捨て子かねぇ』
男の子は裸足で、夜は冷えるというのに、シャツと半ズボンという薄着だった。
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