佐藤矢麻の物語り

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…これはいつもの風景。 だれかれかまわず親父化してお約束のようにひんしゅくを買っていたり、する。腕はいいはずなのだがここは真面目な診療所だ。目を見ても冗談なのか本気なのかつかめないと人はいう。 非常に厄介だ…。 これはもうダメ、頭がのぼせていられない! そう思った矢麻は、天井に気をつけながら豪快に立ち上がった。 天井にかすった。予想の範囲内。 「もう帰る!」 顔を真っ赤にしたままタンカをきった彼女だったが、 ふと足元に自分の身長の半分しかないような少女がしがみついていた。 このこは部屋にはいなかったはずだが、さっきから診察室の中を覗き見していたらしい。 「かえる…?治療…しないと…これかわいそうだよ」 なんとなく生気がない。曇った色の瞳をしている内気な少女。 少女は矢麻の擦り切れた四分丈のパンツからのぞく鱗の立った肌を、小さな手で撫でた。
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