第1章 “出逢い”

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 白い壁に覆われた宮殿のような屋敷に、サヤとセフィリアは入っていく。  ここが、サヤが生まれて育った自分の家なのだ。  町外れにある丘の上を、平らにして大きな屋敷を、20年前に父が建てた。  サヤは、この屋敷で育ち、町の人たちにも愛された。  「お帰りなさいませ。」 と、セフィリアが玄関のドアを開け、サヤが中に入っていくと、何人ものメイド達が声を揃えて腰を曲げて出迎えていた。  「ただいま。アンリ、ジャック。お母様はまだ帰らなくて?」 と、サヤは廊下を歩きながら前を歩く若い男と女のメイドに聞いた。  「はい。たぶん夜中に帰られるかと。」 と、男の方が答える。  「そう。セフィリア。温かいスープが欲しいわ。」 と、サヤは後ろに振り向いた。  セフィリアは、一つ首を縦に動かすと、その場を離れ、くるりと後ろに振り向き、歩いていった。  「暖かくなってきたわね。」 と、サヤは呟く。  「はい。そうですわね。サヤ様。」 と、女のメイドが答えた。  「ねえ。アンリ。お父様が帰ってこられたら、みんなでお花見をしに行きましょう。」 と、サヤはアンリの前に飛び出る。  「はい。いたしましょう。」 と、アンリは笑顔で答えた。  アンリの人好きのするコケティッシュな笑顔が、サヤは大好きだ。  アンリは、サヤと同じ歳だ。  サヤが町中で、パンを売る仕事していたアンリを一目見た瞬間に、サヤはアンリが気に入った。  アンリの軽やかな足取り、上品な振る舞いに、セフィリアも太鼓判を押すほどのアンリの仕事ぶりに、サヤはアンリを自分のメイドとして置くようになった。  部屋の扉の前に着く。  サヤは、扉の取っ手を掴み、扉を開ける。  サヤのほっそりとした体が、部屋の中に滑るように入っていく。  サヤは、着ていた春用のコートを脱ぐと、アンリに手渡した。  アンリは、コートをハンガーに掛け、クローゼットにしまう。  「サヤ様。わたくしは、これで失礼いたします。」 と、アンリは頭を下げて部屋を出ていった。
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